【居酒屋の革命児】石井誠二氏インタビュー第1話「夢」
■石井誠二 | プロフィール
1942年(昭和17年)6月18日、東京目黒区生まれ。株式会社八百八町代表取締役CEO。
1973年(昭和48年)30歳のときに札幌で創業した「つぼ八」が大成功、洋風居酒屋ブームを巻き起こす。その後、東京進出、全国展開を果たし、日本屈指の居酒屋チェーンを作り上げる(400店舗・売上高500億円)が、突然の社長解任で「つぼ八」を離れる。
だが、持ち前の不屈の精神で再起を果たし、1988年(昭和63年)、「21世紀のあるべき居酒屋の姿」を追求するため株式会社八百八町の前身、株式会社エス・アンド・ワイ石井を設立(1999年平成11年に株式会社八百八町に社名変更)。「八百八町」「かたりべ」「ひもの屋」といった居酒屋業態の他、定食屋業態の「肉屋の正直な食堂」など現在都内を中心に87店舗を展開している。(平成22年8月31日現在)
人材教育にも定評があり、「つぼ八」、「八百八町」で薫陶を受けた人々の中からは、多くの企業家が輩出されている。ワタミ株式会社代表取締役会長 渡邉美樹氏も「つぼ八」時代の教え子である。
今回は、石井誠二氏のインタビュー(全6話)の第1話「夢」を紹介していきます。
ワザはいらない
お店というのは、店長ひとつでどうとでもなる。だからこそ店長がどうやってチームワークを作るかが大事である。そして、店長についてくる子に、「ワザ」はいらない。○○の達人です。△△の資格をもっています・・・そういうワザはいらないという。
なぜかというと「ワザは飽きられる」から。
では、飽きられないものは何か・・・・それは「夢」だという。
小手先のテクニックだけではなく、その人に「心」がないとダメという意味である。
そのためには、夢の共有が必要になる。もちろん、八百八町の入社面接では「夢」を聞かれる。夢のない人は、入社させないそうである。しかし、面白いのは、夢がない人には「嘘でも夢を言え」と言ってしまう点である。嘘でも言ってしまえば、言ってしまったことに責任を感じて、夢を目標に変えて、進むという考えからである。
また、場合によっては「相手の夢を買おう」となることもある。
渡邉美樹氏と出会ったときもそうであったという。彼の夢を買おうと思ったからこそ、500万円しかなかった彼に、お金を貸してくれる人を見つけてあげたそうだ。
ウサギとカメ
夢を持ち、志に変え、それを計画に落としている人は、おのずとゴールが決まる。
そして、ゴールが決まったら、脇目もふらず強い意志をもって進め。と。
その時に周りにいる人たちは、ライバルではなく、仲間なのである。
ライバルはあくまでも自分自身。ゴールにいくまでの間に「もうやめようかな、疲れたな、休もうかな」と、つい甘えが出てくる。この甘えこそが敵、だからこそライバルは自分自身なのである。
つまり、ゴールまでにライバルは自分自身しかいないのだから、慌ててゴールに向かう必要はない。周りの同業や同僚を見て「まだ、いいや」なんと思ってはいけない。これでは「ウサギとカメ」のウサギになってしまう。
だから、カメでいい。
カメのように一歩一歩、進んでいけばいい。と、石井氏は言っている。
編集後記
チェーン店の店長をしていると、ついつい他店の店長と自分を比較してしまうことが多いと思う。「なんで、あいつのほうが出世しているんだ」「あいつの店は、立地が良いから、もともと売れるんだ」など・・・
この業界に入った時には、「こんな美味しい料理を食べさせてあげたい」「誰もが驚く新しいお店を作りたい」など、自分の「夢」があったと思う。しかし、ゴールに向かうまでの間に、周りが気になったり、弱気の虫が邪魔をしたりする。
他人に勝つことを考える前に、自分の夢に向かって強い意志を持ち、真っ直ぐに進むことが、成功につながるのだということを、今回のインタビューで学んだ。
(事務局:中小企業診断士 平井彩子)
著書紹介(石井 誠二)